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2021/09/28

養子 ~養子縁組をご検討中の方、ご家族に養子がいる方~

養子縁組

普段から相続関係の戸籍を見ることが多い司法書士にとっては、養子縁組は身近な制度ですが、一般の方の感覚としては「何だか古臭い」「昔の制度」と思われるのではないでしょうか?

 

 

しかし、 養子縁組は、今でも、再婚した相手方の子を養子とする場合、資産承継や事業承継で活用する場合などで利用されています。

 

後述するように、養子縁組とは、簡単に述べると、法律上の親子関係を作る制度です。

 

後から親子関係を作るため、血縁上の親子とは異なる取扱いがされています。

特に、相続の場面では、「養子の有無」「被相続人との関係性」「養子縁組の日がいつか?」によって、相続人に該当するかどうかを判断しなければならないため、注意を要する制度です。

 

なお、このブログにおいて、「法」とは民法のことを指します。

 


養子とは?

養子とは、簡単に言えば、「(法律上)親子関係」を作る制度です。

 

養子には、普通養子と特別養子の2種類があり、それぞれ要件や効果が異なります。

それぞれ分けて解説いたします。

 

普通養子

養子縁組の成立要件(普通養子)

普通養子は、原則として、養親と養子が、①養子縁組したいという意思の合致があり、かつ、②縁組届を提出すること【法799,739】で、成立します。

  •  (養子縁組したい)意思の合致 + 縁組届の提出

ただし、上記要件を満たせば、誰とでも養子縁組ができるわけではありません。

養子縁組をすることができない場合又は制限を受ける場合として、民法では以下のことが定められています。

  • 養親は成年(※R4.1.1以降は20歳以上)であること。【法792】
  • 尊属(父母、祖父母)または年長者を養子とすることができない。【法793】
  • 後見人が被後見人を養子とする場合には、家庭裁判所の許可を受けなければならない。【法794】
  • (法律上)結婚している者が未成年者を養子とする場合には、配偶者とともに養子縁組しなければならない(「夫婦共同縁組」といいます。)。【法795】
  • 配偶者のある者が縁組するには、その配偶者の同意を得なければならない。【法796】
  • 養子が15歳未満の場合には、その法定代理人(多くの場合は、実方の両親)が縁組の承諾をする(「代諾養子」といいます。)。【法797】
  • 未成年者を養子とする場合には、家庭裁判所の許可が必要。ただし、自己又は配偶者の直系尊属を養子とする場合には許可は不要。【法798】

養子縁組の効果(普通養子)

養子縁組すると、以下の効果が生じます。

  • 養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得します。【法809】
  • 養子は、原則として、養親の氏となります。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏のままとなります(離婚等により婚姻関係が終了した場合には、養親の氏になります。)。【法810】
  • 子が養子であるときは、養親の親権に服します。【法818条2項】
  • 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生じます。【法727】
  • 養子若しくはその配偶者または養子の直系卑属若しくはその配偶者と、養親またはその直系尊属の間の婚姻の禁止。養子縁組が終了した場合も同様。【法736】
  • 同居の親族間で、互いに扶け合う義務が生じる。【法730】
  • 扶養義務が生じる。【法877】

それでは、養子縁組をした養子と実方の親族との親族関係はどうなるのでしょうか?

上記のとおり養親に親権が移るなど一部変更は生じますが、そのまま親族関係は継続します。

その結果、養子は、養親と実方の両親の両方の相続人になることができます。

 

ただし、注意が必要なのは、養子縁組の効果は「養子縁組の日」から生じることです。【法809】

つまり、養子縁組前に生じたことは、養子にとって何の影響も及ぼしません。

 

特別養子

特別養子は、「家庭に恵まれない子に温かい家庭を提供して,その健全な養育を図ることを目的として創設された,専ら子どもの利益を図るための制度(※1)」です。

※1 法務省HP「民法等の一部を改正する法律(特別養子関係)について」より抜粋

 

養子縁組の要件(特別養子)

特別養子縁組は、上記のとおり、養親と養子との間に完全な親子関係を作ることを目的としているため、普通養子と異なり、要件は厳格です。

  • 養親となる者が、以下の条件を満たした上で家庭裁判所に請求しなければならない。【法817の2】
  • 養親となる者は、配偶者のあるものでなけれならず、夫婦ともに養親となる必要があります(「夫婦共同縁組」といいます。)。【法817の3】
  • 養親は25歳以上。ただし、養親となる夫婦の一方が25歳に達していない場合であっても、その者が20歳に達していれば、養子縁組することができます。【法817の4】
  • 養子は、家庭裁判所に請求時に15歳未満であること(一部例外があります)。【法817の5】
  • 特別養子縁組が成立するまでに18歳未満であること。【法817の5】
  • 養子となる者が15歳以上の場合には、養子となる者の同意が必要。【法817の5 3項】
  • 養子となる者の父母の同意が必要となります。ただし、父母がその意思を表示することができない場合または父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りではありません。【法817の6】
  • 実の父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認められること。【法817の7】
  • 養親となる者が養子となる者を、原則、家庭裁判所に請求したときから6か月以上の期間監護しなければなりません。【法817の8】

 

養子縁組の効果(特別養子)

特別養子縁組による効果は、普通養子の場合と基本的には同じですが、大きく異なる点があります。

 

それは、実方の父母及びその血族との親族関係が終了します。【法817の9】

ただし、夫婦一方の実の子を特別養子とする場合には、その血族との親族関係は終了しません。

 

【参考】実子について

 

通常、親子関係は、血縁によって決まります。

母親から生まれた子は、当然に、その母親と親子関係となります。

 

一方、父親については、少し複雑です。

次のような場合に、夫の子と推定されます。【法772】

  • 婚姻中に生まれた子
  • 婚姻前200日を経過後又は婚姻の解消若しくは取消日から300日以内に生まれた子 

推定なので、夫は嫡出否認の訴えを起こして、「その子は自分の子ではない」と主張して、裁判所の判断により否定することができます。【法774、775】

なお、この嫡出否認の訴えは、夫がこの出生を知った時から1年以内に提起しないといけません。【法777】

 

夫が、子の出生後に、その嫡出であることを承認したときは、上記の否認権を失います。【法776】

一度承認しておいて、後で「違う」と覆すのは、子にとって良くないことだからです。

 

その他に、例えば、婚姻関係にない男女の子(嫡出でない子)の場合(「婚外子」といいます。)には、市役所へ認知届を提出することによって、親子関係が成立します。

 

認知をなかなかしてくれないと、子にとっては不利益です。

そこで、子(その直系卑属又はこれらの者の法定代理人)は、認知の訴えを提起することもでき、裁判所で決着をつけることになります。

 

なお、認知した場合には、父親と子それぞれの戸籍に記録されます。

 


養子の終わり「離縁」

婚姻の終わり(離婚)と同じように、養子縁組にも当事者の意思で終わらせることができます。

これを「離縁」といいます。

 

離縁についても、普通養子と特別養子で、要件やその効果は異なります。

 

普通養子の場合

普通養子の場合、養親と養子との間で協議して養子縁組を終了させる場合(協議上の離縁等)と、裁判所に離縁の訴えを提起して養子縁組を終了させる場合(裁判上の離縁)の2つの方法があります。

 

協議上の離縁【法811】

原則的な要件としては、養子縁組を成立する場合と同じで、①養親子関係を終わらせる意思と②離縁の届出となります。

 

①養親子関係を終わらせる意思 + ②離縁の届出【法812,739】

 

養子縁組の成立時にもいくつか要件があったように、離縁でもその他に要件があります(※2)。

  • 養子が15歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。【法811条2項】
  • 縁組の当事者の一方が死亡している場合に離縁するには、家庭裁判所の許可が必要(死後離縁)。【法811条6項】
  • 養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、夫婦が共にしなければならない。【法811条の2】

※2 一部細かい規定は省略しています。

 

万が一、詐欺又は強迫によって、離縁した場合には、家庭裁判所にその取消を請求することができます。【法812,747】

この取消権は、詐欺を発見し、または強迫を免れた後、6か月以内にしなければ消滅します。離縁を追認した場合にも同様に取消権は消滅します。

 

裁判上の離縁等【法811】

離縁の訴えを提起するためには、次のいずれかの条件に該当しなければなりません。【法814】

  • 他の一方から悪意で遺棄されたとき。
  • 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき。
  • その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。

上記の条件に該当すれば、必ずしも離縁が認められるわけではなく、裁判所は一切の事情を考慮して縁組の継続を相当と認めるときには、離縁の訴えを棄却することができます。

 

離縁の効果(普通養子)

離縁によって、養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は終了します。【法729】

 

その結果、養子は離縁によって縁組前の氏に戻ります(「復氏」といいます。)。【法816】

ただし、縁組して7年以上経過している場合には、離縁の日から3か月以内に戸籍法に定めるところにより届出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができます。

 

特別養子の場合

特別養子の場合は、普通養子の場合と異なり、離縁する場合には家庭裁判所に請求しなけばならず、これ以外の方法は認められていません。

 

特別養子の離縁が認めれる場合

家庭裁判所は、次のいずれの要件にも該当する場合であって、養子の利益のため特に必要があると認めるときに限り、離縁させることができます。【法817の10】

  • 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。
  • 実父母が相当の監護をすることができること。

 

離縁の請求をすることができるのは、養子、実父母又は検察官となっており、養親はこの請求をすることができません。

 

離縁の効果(特別養子)

特別養子縁組の場合、成立時に切れた養子と実父母及びその血族との間の親族関係が、離縁の日から復活します。【法817の11】

 

離縁により、養親と養子の親子関係が終了するのは、普通養子と同様です。

 


普通養子と特別養子の比較(まとめ)

養子縁組成立時

主なもののみ記載します。

比較項目 普通養子 特別養子

縁組の効果

 

  • 養子縁組の日から、養子は養親の嫡出子となる
  • 養子は、養親の氏を称する
  • 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生じる

 

 

  • 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生じる
  • 実父母及びその血族との親族関係が終了 

 

手続方法

 

  • 市役所に養子縁組届を提出
  • 家庭裁判所の許可(養子が未成年、かつ自己又は配偶者の子以外の場合)

 

 

  • 家庭裁判所に請求

 

養親の要件

 

  • 原則、成年に達していること
  • (養子が未成年の場合)夫婦共同縁組
  • (養子が成年の場合)配偶者の同意

 

  • 配偶者がいること
  • 夫婦共同縁組
  • 原則、25歳以上であること

 

養子の要件
  • 尊属または年長者でないこと

 

  • 特別養子縁組の請求時に15歳未満であること
  • 特別養子縁組が成立するまでに18歳未満であること

 

実方の父母の同意等

  • 15歳未満の場合は、実方の父母が同意

 

  • 原則、父母の同意が必要

 

監護の状況  

 

  • 原則、家庭裁判所に請求してから6か月以上

 

その他  

 

  • 父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認められること

 

※1 自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合を除く。

 

離縁

主なもののみ記載します。

比較項目 普通養子 特別養子
離縁の効果

 

  • 養子と養親及びその血族との間の親族関係の終了
  • 復氏

 

 

  • 養子と養親及びその血族との間の親族関係の終了
  • 実父母及びその血族との親族関係が復活
  •  復氏

 

手続方法

 

  • (協議上の離縁)市役所に養子離縁届を提出
  • (裁判上の離縁)離縁の訴えで勝訴+養子離縁届を提出

 

 

  • 家庭裁判所に請求(請求権者;養子、実父母、検察官)

 

協議上の離縁の要件

  • 養親と養子との間の協議
  • 養子が15歳未満の場合には、離縁後に養子の法定代理人となる者が協議する
  • 死後離縁の場合は、家庭裁判所の許可
  • 養親が夫婦で、未成年者を離縁する場合には、夫婦ともにしなければならない
  • 不可(制度自体存在しない)

裁判上の離縁の要件

 

  • 他の一方から悪意で遺棄されたとき
  • 他の一方の生死が三年以上明らかでないとき
  • その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき

 

  • 養子の利益のため特に必要があると認めるとき
  • 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること
  • 実父母が相当の監護をすることができること

 

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