
昨今、わが国では離婚率が上昇しています。
当事務所においても、ここ最近、離婚に関するご相談をお受けすることが多くなりました。
今回は、離婚に関して、まとめたいと思います。
【おことわり】
この記事は、2020年2月に作成した記事をリライトして作成しております。
婚姻とは!?

まず、離婚の前提となる、婚姻について説明いたします。
性の多様化に対応した「結婚」という制度そのものについて議論されているところですが、現在の日本では、法律婚(法律上の要件に従った婚姻しか認めない)の制度を採用しています。
婚姻(結婚)の要件
次の要件をすべて満たす必要があります。
- 年齢(男性18歳以上、女性16歳以上)
- 性別(男性と女性であること)
- 婚姻する相手方は、4親等は離れていること(3親等以内の親族とは婚姻不可)
- 婚姻したい意思
- 婚姻届けを提出
ざっくりまとめると、
一定以上の年齢の男女が「この人と結婚したい!」と思って、婚姻届を出す、
と婚姻(結婚)が成立します。
したがって、婚姻日は「婚姻届を出した日(婚姻届けを受理された日)」となります。
結婚記念日を、結婚式を挙げた日とするのが多いと思います。
夫婦間での結婚記念日をどこにするかはそれぞれのご家庭で決めていただければ良いのですが、法律上の婚姻日は婚姻届けを出した日(婚姻届けを受理された日)となります。
婚姻(結婚)の効果
無事に婚姻届けが受理されると、めでたく婚姻(結婚)が成立します。
婚姻により、次のような効果が発生します。
- 同居、協力及び扶助の義務
- 成年擬制(未成年者が結婚したら、成年と同じように扱われるようになる)
- 夫婦間の契約の取消権(夫婦間で締結した契約は、いつでも取消ができる)
- 相続権の発生
- 男女のどちらか一方が、他方の姓を変更しないといけない(婚姻届を出す時点で決める必要があります)
- 姻族関係の発生(婚姻した相手方のご家族と、親族関係となる)
- 子が生まれれば、嫡出子となる
離婚とは!?
ここまでは、婚姻について書いてきました。
ここからは、本題である離婚についてまとめたいと思います。
離婚の場合は、婚姻と違って、2つに分かれます。
- 当事者の合意(話し合い)による離婚する
- 裁判で離婚する
当事者間の合意(話し合い)による離婚する
お互いが話し合って、離婚届けを提出すれば、離婚が成立します。
婚姻と同じで、離婚届けを提出した日(受理された日)が、離婚日となります。

裁判で離婚する
話し合っても離婚できないよう場合には、裁判所で離婚をすることができます。
この場合、裁判所に離婚を訴え出るには、次のいずれかの要件に該当している必要があります(民法第770条第1項)。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
上記1~4に該当したとしても、裁判官が一切の事情を考慮して婚姻関係を継続したほうが良いと判断した場合には、離婚の請求を棄却する場合があります。
そして、裁判所が、離婚相当と判断(判決)し、確定した日が離婚日となります。
※なお、後日、市役所への離婚届の提出は必要です。
財産分与(民法第766条)
離婚を原因として、夫婦で築き上げた財産の清算をすることを「財産分与」といいます。
離婚した者の一方は、相手方に対して財産分与の請求ができます。
離婚と同じように、当事者間で協議が整わない場合は、家庭裁判所に財産分与請求の申立てができます。
ただし、離婚の時から2年(除斥期間)を経過すると、家庭裁判所に財産分与請求の申立てはできなくなります。
なお、協議で財産分与の合意をする場合には、「離婚の時から2年」の期間制限はありませんが、相手方が応じてくれるかどうか分かりません。
離婚の際は財産分与についても協議されるほうが良いでしょう。
財産分与の効力発生日
(合意により離婚した場合を想定します)
離婚の効力発生日が先か? 財産分与の合意が先か?
により、分かれます。
- 財産分与の合意が成立し、離婚届を提出 ⇒ 離婚日(離婚届提出日)
- 離婚届を提出し、財産分与の合意が成立 ⇒ 財産分与の合意をした日
つまり、離婚届+財産分与の合意 のこの2つが揃ったときに、効力が発生します。
財産分与の対象となる財産の範囲
財産分与の法的性質として、次の3つが挙げられます。
- 婚姻中に形成された財産関係の清算(清算的要素)
- 離婚後の他方配偶者の生活保障(扶養的要素)
- 精神的苦痛に対する慰謝料(慰謝料的要素)
上記3要素を検討して、財産分与の額を決定することになりますが、それぞれの要素により対象とする財産の範囲が異なります。
ざっくりな内容となりますが、以下に財産分与の実務上の取扱いについてまとめます。
対象財産 | 実務上の取扱い(概略) | |
清算的要素 |
婚姻中に形成された夫婦共有財産(※1)+過去の婚姻費用分 ※それぞれの固有財産(※2)は含まない。 |
原則1/2 |
扶養的要素 | すべての財産 | 離婚時の不要必要性と不要可能性を検討し決定 |
慰謝料的要素 | すべての財産 | 違法行為の種類や態様、被害の程度などを考慮して決定 |
※1 長期間別居して離婚した場合、別居期間中に形成された財産は含まれない。
※2 婚姻前にそれぞれが有していた財産、相続によって取得した財産など、婚姻期間とは無関係に形成された財産。

まとめ
離婚をしたいと思ったとき、早く籍を抜きたいと考えてしまうかもしれません。
しかし、離婚後に財産分与の話し合いをする、又はその合意書を取り交わすことが困難な場合も考えられます。
離婚の際、財産分与の合意書は、離婚届を出す前に作成されると、事後に余計な心配事がなくなるものと思われます。
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