裁判所で行う手続きのひとつに、民事調停があります。
民事調停は、民事に関する紛争について、当事者の互譲により、条理にかない実情に即した解決を図ることを目的とした手続きです[民事調停法2条]。
もう少しかみ砕いて説明すると、裁判所が間に入って、当事者それぞれの主張を聴き、解決に向けての合意形成(和解)をしていく手続きです。
裁判所で行いますので、合意形成された内容(調停の成立)は、裁判上の和解と同等の効力を有します[民事調停法16条]。
つまり、調停が成立したにも関わらず、当事者の一方が成立した内容に任意に従わない場合には強制執行が可能となります。
民事調停を申立てるにあたり金額の上限はありません。
しかしながら、司法書士が代理人として、受任する場合には、争いの対象となっている金額が140万円以下という制限があります。
もし、140万円を超える額の調停をご検討中であれば、書類作成にて支援させていただきます。
裁判手続きをする上で、まず考えないといけないのが管轄(つまり、どこの裁判所に対して、申立書を提出し、裁判手続きをするか?)です[民事調停法第3条]。
相手方の住所又は居所(法人の場合は、営業所又は事務所の所在地)の簡易裁判所となります。
または、当事者が合意で定める地方裁判所若しくは簡易裁判所となります。
→契約書の最後のほうに、「専属的合意管轄」と題した条項が、これあたります。
次の手順で進めていきます。
民事調停を申し立てるためには、申立書を管轄の裁判所に提出しなければなりません[民事調停法4条の2]。
申立書には、
一 当事者及び法定代理人
二 申立ての趣旨及び紛争の要点
を記載します。
申立書を提出したら、裁判所から調停期日の呼び出しがあります[民事調停法12条の3]。
調停期日は、裁判所で行います(例外的に、事件の実情を考慮して、裁判所外の適当な場所で行うことができます[民事調停法12条の4])。
当事者間において合意が成立すれば、調停調書が作成されます。
調停証書は、裁判上の和解と同一の効力を有することになり、当事者の一方が調停調書の内容に違反した場合には強制執行をすることも可能です。
当事者間において合意が成立しなければ、調停不成立となり、事件終了となります。
事件終了後、その旨の通知を受け取ってから2週間以内に、調停の目的となった請求について訴えを提起したときは、調停申立時に、その訴えの提起があったものとみなされます。
残念ながら、調停の成立する見込みがない場合において、裁判所が職権で、事件解決のために決定をすることがあります[民事調停法17条]。
裁判所がするから何でもアリというわけはなく、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を見て、当事者双方の申立ての趣旨に反しない範囲内で決定します。
この決定において、裁判所は、金銭の支払、物の引渡しその他の財産上の給付を命ずることができます。
裁判所が、この決定(17条決定)をしてから2週間以内に、適法な異議申し立てがない場合には、この決定は、裁判上の和解と同一の効力を有することになります[民事調停法18条]。
上記17条決定に対する異議申立ては、17条決定の告知を受けてから2週間以内にしなければなりません[民事調停法18条]。
17条決定は、その効力を失います。
この場合も、上記調停不成立と同様に、2週間以内に訴えの提起をすることで、調停申立時に訴えの提起をしたものとみなされます[民事調停法19条]
異議申立ては却下されます。
なお、この不適法で却下されたことに対して、即時抗告をすることができます。
即時抗告をしている間は、執行は停止されます。
調停の申立ても取り下げることができます[民事調停法19条の2]。
ただし、次のような制限があります。
初めから調停を申立てたのではなく、通常の裁判中に、裁判官の判断で、話し合いで解決(和解)できないか?と調停手続きに移行される場合があります[民事調停法20条]。
私も何度か経験したことがあります。
双方に決定的な証拠が乏しかったり、争いの原因が法律上の問題というより感情面が先行している場合に、付調停とされることが多いように思われます。
調停が成立すれば、調停調書が作成され、裁判上の和解と同一の効力を有します。
不成立であれば、通常の裁判に戻ります。
ここで規定する費用とは、調停を申し立てるための費用、つまり印紙代や切手代のことです。
特別な定めがなければ、原則、各自折半となります。